夜の柩

語るに落ちる

なんかこじゃれた感じの横文字

 

常々横文字で着飾った言葉が多いな、と思う。食べ物はより顕著で、ショコラとかマリトッツォとかマカロンとかケークサレとか店頭に文字列だけで並んでいても想像が追いつかない。洋菓子という認識のせいで妙に華やかで気取った感じのお菓子……スイーツなんだろうことだけは理解している。

ショコラという響きはまだわかるけどチョコでいいし、マリトッツォはクリームパンだし、マカロンはクリームサンドだし、ケークサレは総菜ケーキだし。気持ち的にケークサレは総菜オムレツisキッシュの親戚みたいなものだと思う。

パスタもそう。パスタというよりスパゲッティーの方が馴染みがある。ミートソース、ナポリタンは日本生まれとしてもボロネーゼ、カルボナーラ、ボンゴレビアンコもしくはロッソ。ここまでは辛うじてわかる。でもゴルゴンゾーラとペペロンチーノは味はわかるけど正式名称まで覚えられない。なんでミドルネームみたいなものまであるんだ、と突っ込んだのは記憶にある。

パスタの種類もだ。ショートパスタの種類に至っては完全にわからない。どれも美味しいことはわかる。多分日本における米の品種みたいなものだ。ななつぼしとかコシヒカリとかはえぬきとか。これも延々と増えていくから覚えられない。

そういえばよく飲むコーヒーもじゃないか。ミルクコーヒー、カフェ・オレ、カフェ・ラテ、カフェ・モカ、カフェ・クレーム、カプチーノ。何がどう違うのか。「いいかい、この世には二通りのコーヒーがある。ミルクが入っているか、入っていないかだ」という、ただそれだけの話のはずがなんだってこんなにも。スタバのメニューは一生理解できそうにない。

多分名前が違うだけで物自体は同じというパターンもある気はする。ある気はするけど、名前が違うだけで別人になる俳優のようなもので、それを眼前に突き付けられるとなんだか味まで違うもののような気がしてしまう。きみはあの時のあれだったのかい、なんてことも後になってからあったりなかったり、する。それとは逆に、似ているけど全くの別物として扱われているものもあるんだろうなぁと思うと、横文字の魔力を感じずにはいられない。材料が一個だけ違うとか、作業工程が微妙に違うとかで。

そんな風に横文字でこじゃれた感じに表現された食べ物や飲み物のことを考えても、結局胃に入ればみな同じと結論してしまうので、なんとかソムリエのように違いのわかる人間には程遠いのだ。