夜の柩

語るに落ちる

期間限定、季節限定、新商品

 

毎年毎シーズン限定商戦は白熱している。あまりにもふつうに生活の中で見るものだからそれが当たり前になっているけど、考えてみれば毎回新しいものを考えるのってすごい労力だ。商品企画担当って創作者とよく似ていると思う。常に新しいものを生み出して発信しないといけないから。

春夏秋冬の限定品は食べ物ばかりではなく服も化粧品もそうだし、アミューズメントパークもそう。どうにもこの"限定"という言葉には魔力がある気がする。今この瞬間を逃すと次の同シーズンまでお目にかかれない、みたいな。数量限定に至っては選ばれし者のみが手にすることができる特別なもので、余程運が良くない限り手にするどころかお目にかかることすらままならない。争奪戦に負ける消費者が多かったとしても、売れ残りが出たり在庫を抱えたりその後の廃棄問題を考えるとメリットの方が圧倒的に大きい気はする。

ただ、この国はちょっと忙しい。今の時期ならハロウィンの隣でクリスマスケーキの予約受付中の文字が並ぶし、ハロウィンが過ぎたら今度は年末年始のお節の予約、年が明ければ節分の恵方巻とバレンタイデーがセットになって、その後はひな祭りとホワイトデー……のように短い期間に詰め込まれ過ぎている。もう少しひとつひとつを味わって余韻に浸らせてくれてもいいのに。

最近はコンビニに行く機会が減ったけど、たびたびお世話になっていた時は"新商品"の文字をよく見かけていた。体感的に大体2週間か3週間程度で入れ替わる。気に入ったものを見つけても大人の事情で次に行った時には姿を消していた、なんてこともよくある。他のコンビニを梯子していくほどの情熱はないから、あの日あの時の出会いが最後だったんだなとしみじみして、また別の新商品を試す。

新しいものが好きというより、単純にその時にしか手に入らないものが気になる。実際、手にして気に入ったらずっとそれを買い続けるから、試すという意味で手に取ってみるのは大事だと思う。新しいものが好きなひとにとってはきっと宝探しのようで面白いんだろう。飽きる前に次のものが出てくるから定期的に足を運ぶし、プラスで他のものも買えば店側にとっても利益につながるし。うまくできている。

季節限定という訳ではないけど、個人的に秋に出回る食べ物──りんご、梨、柿、いも、栗、かぼちゃ──が好きなのでそれを使ったお菓子を食べる頻度が上がる。アップルパイとモンブランはいつでも食べたいくらい好きだけど、そこにかぼちゃのタルト、干し柿、芋羊羹、栗羊羹、どらやきなどの和菓子も選択肢に増える。気候的にも過ごしやすくなるからずっと秋がいい。

コーヒー豆にも限定のフレーバーが出ているから、次の休みに覗いてみようと思っている。スコーンを焼いて少しゆっくり過ごしたい。詰めていた息を吐きだす時間がほしい。そうして短い秋が過ぎたら、長く厳しい冬に備えて色々買い揃えよう。