夜の柩

語るに落ちる

それを青い春と呼ぶなら

 

もしも、若かりし頃の初戀を思い出せといわれたら、それはきっときみの形をしている。

授業の合間に横顔を盗み見るように、校内や校外で友人とはしゃぐ背中を見るように、ふとしたことで声をかける一瞬に緊張して心臓が跳ねるように。何気ない学舎の風景の中の、どこにでもある在り来たりな一つの光景。

カメラのシャッターを切るような思い出なんて、時と共にどんどん朧になっていくのに、そのくせ心の奥が疼くのはどうしてだろう。たくさんの生徒たちの中に紛れていても必ずきみを見つけていた。あの頃がきっと一番、まっすぐに誰かのことを好きになれていた。何年経っても後生大事に抱えて、不意に思い出しては切なさにも似た懐かしさに目を眇める。そんな眩しい形をしている。

初戀は叶わないとはよくいったものだと思う。だから叶わなくていいのだとも思う。遠く眺めているのにもうずっと、眩しいものを見るような気持ちでいる。この先もこうして残るのだろう。ほのかに甘い痛みを纏わせたまま。