夜の柩

語るに落ちる

ブルボンのお菓子

 
ブルボンのお菓子を食べるたびに思い出すことがある。

ひとり暮らしを始めて最初に就いた職場。そこに週一で来ていた九十代の方が「あのねぇ、お得意先からブルボンっていうお菓子を頂いたんだけど、これがすっごく美味しくて。どこに行ったら売ってるの?」と言ってきたこと。この方は会社の社長をしていて、生まれて初めてブルボンのお菓子を口にしたという。ブルボンってあのブルボンだよなぁと思いながら、コンビニでもスーパーでも買えるお菓子(を作っている会社)なんですよ、と答えた。それにすごく驚いた顔をした後にクスクス──この形容が似合う──と笑って、じゃあ帰りにコンビニに寄ってみるわねと返してくれた。後日、どうでしたかって聞いた時にたくさんブルボンのお菓子を買ってどれも美味しかったと話していた顔が忘れられない。

色々な思いが浮かぶ。会社の社長で、色々良いものをたくさん知っているはずなのに手軽に買えるお菓子も美味しいと感じられる柔軟性や、あまり行ったことがないというコンビニに足を運んでいたこと、何よりもその方にお土産でブルボンを持って行った人のこと。なんだかもう、色々すごいと思う。

それが七年程前の話。ご健在であれば百を超えているけど、どうされているだろう。