夜の柩

語るに落ちる

淡いとグロテスク

 
淡いかなしみ、グロテスク。

本当を口にするのは怖いから嘘と強がりばかりが上手くなる。たくさんの、それはもうたくさんの積み上がった嘘。その中に紛れてしまえば臆病なこころは見えなくなるから安心する。そうして必死に守るものは傍から見れば小さくて下らなくて、時折自分でも掌に乗せては無駄に転がして持て余したりもする。そうでもしなければ守れない愚かさを知りながら憎しみにも似た感情を抱いてしまう。傷に触れられるくらいなら、触れたら痛い場所を知られるくらいなら「お前は最低だ」と冷ややかな視線を投げられた方がいい。ああそうだよ、わかったのなら放っておいてくれるかい。そうして気狂いの真似をするのもまたひとつの気狂いで。厚顔無知なのはフリではなく事実だったとしても、どうにも駄目な大人になったものだと思う。

それでも、嘘が吐けないのは君の前。君の、前でだけだった。それだけは濁りようもない事実。駄目な部分を自覚しながらもう戻れない位置にいるのは、きっと今でも君に甘えているせいだね。