夜の柩

語るに落ちる

渡舟の向こう

 
神様のボートに乗って遠くへ行ってしまった人のことを考えていた。電車でいうなら片道切符、途中下車不可の道程。無事に目的地には辿り着けましたか。そちらの景色はどうですか。何がありますか。何が見えますか。何が聞こえますか。せめてこちらのように、何かに苦しめられることのない素敵なところだといいけど。

相席は許されないらしいから一緒に逃避行はできませんでした。乗り合うための資格を得られずに見送ったあの日。青春なんちゃって切符とどこかで聞いたような言葉で銘打てば、船頭も一瞬くらい騙されてくれるかもしれないと馬鹿なことを思っていました。今もまだ、波打ち際で立ち止まっています。