夜の柩

語るに落ちる

上澄みと沈殿物

 
忙殺と呼べるほどに予定を詰めれば余計なことを考えずに済む。

疲労感でぼんやりしているうちにコーヒーはすっかり冷めきって、口の中を潤したとしても後味はいつにも増して苦い。いつもまでも口の中に残って尾を引いている。口直しに砂糖やミルクを足したところで上手く溶けもせずに沈殿する。上澄みばかりを掬って薄っぺらい味が流れ込む。

あっという間に過ぎていく時間。毎日繰り返す日常。余計なことを考えたくないのは、その余計なことが少なからず真理を突いてくるからで。追い詰められないと動けないくせに追い詰められることにうんざりしている。飽いている。

混ざりきらなかったコーヒーの中に一匙の違う味を求めてしまう。非現実は現実の中にこそあって、それを見つけるには余計なことを考える気力が必要なのに、それを自ら潰しているから世話無い。苦い思いに甘んじて、上澄みの不味い味と沈殿してざりざりした砂糖の塊を飲み込んだ。そうして明日もまた繰り返すんだろう。