夜の柩

語るに落ちる

たまご料理

 

自炊をちゃんとするようになってから、材料や手順は単純だけどむずかしいなと思う料理がいくつかあることに気づいた。筆頭はたまご料理。目玉焼き、たまご焼き、ゆでたまご、スクランブルエッグ、オムレツ。どれも難しい。

基本は半熟が好きだけど、弁当に入れる時はしっかり火を通さなくちゃいけないから目玉焼きとゆでたまごは除外される。固ゆでにすると口の中がもそるし。たまご焼きは出汁巻きにすれば食感やのど越しが瑞々しくて半熟っぽくなるから採用。オムレツはプレーンなやつにチーズを入れても、中に野菜や肉を入れてスペインオムレツみたいにしても美味いし、中に入っている具材を考えると焼きすぎるくらいで丁度良い、採用。

問題はスクランブルエッグだ。半熟とろとろ、ホテルの朝食に出るような理想的なスクランブルエッグを弁当に入れた日には他のおかずがべちゃべちゃになるか、季節によっては腐って大惨事になる。じゃあしっかり火を通してみるか、と箸をせかせか動かしていると……うん、こいつぁアレだ。そぼろだ。二色弁当あるいは三色弁当の右側に配置されがちなアレ。これはこれで好きだけど、スクランブルエッグを安全に美味しく食べたいという気持ちは満たされない。

要は汁気が問題なのだが、スクランブルエッグ……どうがんばっても汁気が出る。ぐーぐる先生に聞いてみたら”時間が経っても汁気が出ない!”だの”時間が経ってもしっとり!”だのというワードが出てくる。ほう、どれどれと真似してみるのに、やっぱりどうしてもべちゃべちゃする。これは単純に作る側の料理センスがない。残念すぎる。

もう仕方がないのでそぼろをスクランブルエッグと思い込んでみてはどうだろう。ちょっと火が通りすぎたスクランブルエッグ。箸ではちょっと食べにくいスクランブルエッグ。冷えた白米をべしゃらせることもなくきっちり鎮座するスクランブルエッグ。心做し、隣にある甘辛い肉そぼろとよく合う甘めの味したスクランブルエッグ……。

無理がある。そぼろはそぼろだ。やっぱり弁当にスクランブルエッグは諦めるしかないのか。休日の今日も試しに作ってみたが結果は言うまでもなく。作り過ぎてしまったスクランブルエッグ、いや、そぼろをせっせと冷凍保存することになったのだった。