夜の柩

語るに落ちる

冬将軍の足音が響く

 
めっきり寒くなった。冬に着々と向かっている。今週のどこかで雪マークがついていた。少しずつ布団から出るのがつらくなる季節がやってくる。少し前に毛布を引っ張り出して、家にいる間はほぼそれに包まる日々を送っている。冬がくるんだなぁ。長くて寒い冬が。気持ち的にはもうとっくに冬のような気がしているけど、まだプラスの気温だから耐えられそう。毛布や暖房器具は季節を感じるけど、暖房器具に関しては極力我慢したいというか、意地のようなものが芽生えてなかなかつけられない。さすがに氷点下になったら生命の危機に陥るので諦めてつけるけど、どうしてか負けた気持ちになる。その一方で、暖房をガンガンに効かせた暑いほどの部屋の中、半袖短パンでアイスを食べるという人たちもいる。彼らにエコという言葉は通用しない。

雪にはしゃぐどころか雪はもう間に合ってますお腹いっぱいです結構ですと思うし、雪に囲まれて過ごしているのにわざわざ山の中に入ってスノーボードをする兄を珍獣か何かを見るような目で見送りもするけど、冬のしんとした静けさは嫌いじゃない。音を全て吸い取って閉じ込めているような、冷えた空気にないはずの静寂という音を感じられるような気がして。夜の空が綺麗に見えるのもいい。それはそれとして、冬はもっと短くなってほしい。年明けから冬将軍は本気を出すな。

雪深い場所にいると結露対策や防寒の工夫や滑りにくくなる歩き方や光熱費の問題に頭を悩ませる羽目になる。人が少ないところでは雪下ろしの問題も、それに伴う事故もある。暖かいところに行きたいなぁと思いながら、柵を解けずにここにいる。

唯一の楽しみは鍋やスープを美味しく感じられること。普段は食べない肉まんも食べる機会が増えたり、自販機で買う缶コーヒーをホッカイロ代わりにしたりする。温かいものを口にした時の、内臓が温まっていく感じが堪らなく好きだ。その瞬間に幸福にも似たものが体に染みわたっていく。考えるだけで肉まんを頬張りたくなる22:00……着替えて外に出る気力はないので明日の仕事帰りの楽しみにしよう。