夜の柩

語るに落ちる

夢を見たから思い出した

 
愛してるすら言わせてくれなかった。きっとこれは、あの人のための言葉ではなかった。

どんなに好きでも、どんなに焦がれていても、言えない言葉や言えなかった言葉はたくさんあって。それらが今になって柔らかい真綿のように首を絞めてくる。なんてタチが悪い。多分これは自分の中の後悔みたいなもので、やっぱりどんな状況であれ言っておけばよかったと思う気持ちと、言わなかった自分の自制心を褒めたい気持ちと、思っていても言えなかったのはあの人のための言葉ではなかったのだと、どこか安堵する気持ちがぐちゃぐちゃ混ざる。まだ上手く消化しきれていない。

離れた人のことを悪く言いたくないから普段は思い出さないようにしている。それでもふとした瞬間に湧き上がってくるのは、ちゃんと向き合って精算できなかったからだ。全部捨て置いてしまえばよかったのに、下手な情を持つからこうなる。今までだってこの情が仇になってきたというのに。

少し恨んだり、憎んだり、悲しくなったり、苛立ったりしながら少しずつ少しずつ薄れていくことを願っている。